今回は、数列の和の公式の証明です。
証明を通して、使えるようになりたいコツが、数学的帰納法を除いても3つあります。
【問題】
\begin{eqnarray}
\sum_{ k = 1 }^{ n } k^2
= \frac{ 1 }{ 6 } n ( n + 1 ) ( 2n + 1 ) \mbox{を示せ。ただし} \sum_{ k = 1 }^{ n } k
= \frac{ 1 }{ 2 } n ( n + 1 ) \mbox{は既知とする。}
\end{eqnarray}
コツ壺
・数列は「となり同士」の関係を大切に
・Σはほぐして、足し算の形に直す
・となり同士で打ち消しあう計算は「たて書き」で行う
作戦
となり同士の関係に着目すると
\[ \frac{1}{k(k+1)}=\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1} \]
と同じように
\[ k(k+1)= \frac{1}{3}\{ k(k+1)(k+2) – (k-1)k(k+1) \} \]
も、階差数列のように和を計算できます。
解答・解説
YouTubeによる解説
解答
\[ k(k+1)= \frac{1}{3}\{ k(k+1)(k+2) – (k-1)k(k+1) \} \]
において、$ k=1, 2, 3, \cdots n $ とすると
\begin{array}{cc}
k=1 \mbox{のとき} & 1 \cdot 2 = \frac{1}{3} ( 1 \cdot 2 \cdot 3 – 0 \cdot 1 \cdot 2 ) \\
k=2 \mbox{のとき} & 2 \cdot 3 = \frac{1}{3} ( 2 \cdot 3 \cdot 4 – 1 \cdot 2 \cdot 3 ) \\
k=3 \mbox{のとき} & 3 \cdot 4 = \frac{1}{3} ( 3 \cdot 4 \cdot 5 – 2 \cdot 3 \cdot 4 ) \\
\vdots \\
k=n-1 \mbox{のとき} & (n-1) n = \frac{1}{3} \{ (n-1) n (n+1) – (n-2) (n-1) n \} \\
k=n \mbox{のとき} & n (n+1) = \frac{1}{3} \{ n (n+1) (n+2) – (n-1) n (n+1) \}
\end{array}
辺々加えると
\[
\sum_{ k = 1 }^{ n } k(k+1) =\frac{1}{3}n (n+1) (n+2)
\]
これより
\begin{eqnarray}
\sum_{ k = 1 }^{ n } k^2 &=& \frac{1}{3}n (n+1) (n+2) – \frac{1}{2}n(n+1) \\
&=& \frac{1}{6}n(n+1) \{ 2(n+2) -3 \} \\
&=& \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)
\end{eqnarray}
以上により、題意は成り立つ。
別解
$n$に関する式なので、数学的帰納法が思いつくのは自然な発想だと思います。
数学的帰納法のポイント
$n=k$のときなどの「仮定した式」を必ず使って、$n=k+1$のときなどの証明すべき式を「目標式として余白に書いて」おく。
この問題では、すでに $k$は使われているので、下の①で $n=l+1$としたときの $\displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ l+1 } k^2
= \frac{ 1 }{ 6 } (l+1) ( l+ 2 ) ( 2l + 3 ) $ を余白に書いて、示すべき目標式とします。
解答
\[
\sum_{ k = 1 }^{ n } k^2
= \frac{ 1 }{ 6 } n ( n + 1 ) ( 2n + 1 ) \hspace{5mm} \cdots \mbox{①}
\]
i) $n=1$のとき、①は明らかに成立する。
ii) $n=l$ のとき、①が成り立つと仮定すると
\[
\sum_{ k = 1 }^{ l } k^2
= \frac{ 1 }{ 6 } l ( l + 1 ) ( 2l + 1 )
\]
となるが、このとき
\begin{eqnarray}
\sum_{ k = 1 }^{ l+1 } k^2 &=& \sum_{ k = 1 }^{ l } k^2 +(l+1)^2 \\
&=& \frac{ 1 }{ 6 } l ( l + 1 ) ( 2l + 1 ) +(l+1)^2 \\
&=& \frac{ 1 }{ 6 } ( l + 1 ) \{l(2l+1)+6(l+1)
\} \\
&=& \frac{ 1 }{ 6 } ( l + 1 )(2l^2+7l+6) \\
&=& \frac{ 1 }{ 6 } ( l + 1 )(l+2)(2l+3)
\end{eqnarray}
となるので、①は$n=l+1$のときも成り立つ。
i),ii) より、数学的帰納法により題意は成り立つ。
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