【裏技?】たすき掛け因数分解をしない因数分解

因数分解

たすき掛けの因数分解で数学が終了となってしまう高校生がたくさんいます。

悪夢として忘れてしまった人もいるかもしれませんが、

\[ acx^2+(ad+bc)x+bd = (ax+b)(cx+d) \]

が、たすき掛けの因数分解です。実際の方法は教科書にもありますし、ブログ上で表示するためにhtml や図を描くのが面倒なので省略します。

たすき掛け因数分解はもちろん出来てほしいですが、どうしてもできないという人のために、たすき掛けせずとも簡単にできる方法をご紹介します。

YouTube 解説動画

YouTube 動画でも解説していますので、ぜひご活用ください。

たすき掛けではなく、「くくってくくる」

たすき掛けを行わない因数分解は、展開公式を逆に行う方法です。

「何を当たり前のことを!」と怒られそうですが、感覚的には「くくってくくる」ことになります。

まずは、展開公式を逆に進めてみましょう。

展開公式を逆向きに計算すると

\[ (ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd \] において \[ \color{yellow}{ac} \times \color{yellow}{bd} = \color{red}{ad} \times \color{red}{bc} \] なので、$x^2$ の係数と定数項の積を「別の数字の積にして、和が $x$ の係数になるように」すると、展開の公式を逆に進んで \begin{eqnarray} \color{yellow}{ac}x^2+(\color{red}{ad}+\color{red}{bc})x+\color{yellow}bd &=& \color{yellow}{ac}x^2+\color{red}{ad}x+\color{red}{bc}x+\color{yellow}{bd} \\ &=& ax(cx+d)+b(cx+d) \\ &=& (ax+b)(cx+d) \end{eqnarray} と、共通因数でくくってくくる感じで因数分解できます。

なんだか、狐につつまれたようですね。念のために $x$の係数の順番を $\color{red}{ad}+\color{red}{bc} $ ではなく $\color{red}{bc}+\color{red}{ad}$ にして計算してみましょう。

\begin{eqnarray} \color{yellow}{ac}x^2+(\color{red}{ad}+\color{red}{bc})x+\color{yellow}bd &=& \color{yellow}{ac}x^2+\color{red}{ad}x+\color{red}{bc}x+\color{yellow}{bd} \\ &=& ax(cx+d)+b(cx+d) \\ &=& (ax+b)(cx+d) \end{eqnarray} $x$の係数の順番を $\color{red}{ad}+\color{red}{bc} $ ではなく $\color{red}{bc}+\color{red}{ad}$ にすると \begin{eqnarray} \color{yellow}{ac}x^2+(\color{red}{bc}+\color{red}{ad})x+\color{yellow}bd &=& \color{yellow}{ac}x^2+\color{red}{bc}x+\color{red}{ad}x+\color{yellow}{bd} \\ &=& cx(ax+b)+d(ax+b) \\ &=& (ax+b)(cx+d) \end{eqnarray} と確かに計算できました。



では、実際に例題をやってみましょう。

例題

【例題1】$ \hspace{20mm} 2x^2 + 7x + 3 $
【例題2】$ \hspace{20mm} 3x^2 + 8x + 4 $
【例題3】$ \hspace{20mm} 4x^2 – 8x – 5 $
【例題4】$ \hspace{20mm} 5x^2 -11x – 12 $
【例題5】$ \hspace{20mm} 6x^2 – 13x + 6 $

解説するまでもなさそうですが、続いて解答です。

例題解答

【例題1】 \begin{eqnarray} 2x^2 + 7x + 3 &=& \color{yellow}{2}x^2 + (\color{red}{6}+\color{red}{1}) x + \color{yellow}{3} \\ &=& 2x(x+3) +x+3 \\ &=& (x+3)(2x+1) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray} 【例題2】 \begin{eqnarray} 3x^2 + 8x + 4 &=& \color{yellow}{3}x^2 + (\color{red}{6}+\color{red}{2}) x + \color{yellow}{4} \\ &=& 3x(x+2) +2x+4 \\ &=& (x+2)(3x+2) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray} 【例題3】 \begin{eqnarray} 4x^2 – 8x – 5 &=& \color{yellow}{4}x^2 + \{ \color{red}{2}+( \color{red}{-10}) \} x \color{yellow}{-5} \\ &=& 2x(2x+1) -10x-5 \\ &=& 2x(2x+1) -5(2x+1) \\ &=& (2x+1)(2x-5) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray} 【例題4】 \begin{eqnarray} 5x^2 – 11x – 12 &=& \color{yellow}{5}x^2 + (\color{red}{-15}+\color{red}{4}) x \color{yellow}{-12} \\ &=& 5x(x-3) +4x-12 \\ &=& 5x(x-3) +4(x-3) \\ &=& (x-3)(5x+4) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray} 【例題5】 \begin{eqnarray} 6x^2 – 13x + 6 &=& \color{yellow}{6}x^2 + \{\color{red}{-4}+(\color{red}{-9})\} x + \color{yellow}{6} \\ &=& 2x(3x-2) -9x+6 \\ &=& 2x(3x-2) -3(3x-2) \\ &=& (2x-3)(3x-2) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray}

$x^2+(a+b)x+ab$ も同じようにできるが…

実は $x^2+(a+b)x+ab$ も全く同じように計算できる

たとえば \begin{eqnarray} x^2 -4x – 5 &=& \color{yellow}{1}x^2 + (\color{red}{-5}+\color{red}{1}) x \color{yellow}{-5} \\ &=& x(x-5) +x-5 \\ &=& (x+1)(x-5) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray} と計算できますが、この場合は「かけて$-5,$ たして $-4$ 」となる2つの数を見つけるほうが速いですね。

これ以上、練習しなくても大丈夫とは思いますが、最後に練習問題をつけておきます。

練習問題

【問1】$ \hspace{20mm} 5x^2 -11 x + 2 $
【問2】$ \hspace{20mm} 6x^²+13x-5 $
【問3】$ \hspace{20mm} 12x^2+10x+2 $
【問4】$ \hspace{20mm} 35x^2-36x-32 $
【問5】$ \hspace{20mm} 48x^2 -5x \,- 18 $

数字が大きくなるときは、偶奇に着目して絞りこんで行きましょう。

偶数・奇数の和

\begin{eqnarray} \mbox{偶数} + \mbox{偶数} &=& \mbox{偶数} \\ \mbox{偶数} + \mbox{奇数} &=& \mbox{奇数} \\ \mbox{奇数} + \mbox{偶数} &=& \mbox{奇数} \\ \mbox{奇数} + \mbox{奇数} &=&\mbox{偶数} \end{eqnarray}

偶数・奇数の積

\begin{eqnarray} \mbox{偶数} \times \mbox{偶数} &=& \mbox{偶数} \\ \mbox{偶数} \times \mbox{奇数} &=& \mbox{偶数} \\ \mbox{奇数} \times \mbox{偶数} &=& \mbox{偶数} \\ \mbox{奇数} \times \mbox{奇数} &=&\mbox{奇数} \end{eqnarray}

では、解答です。

練習問題

【問1】\begin{eqnarray} 5x^2 -11 x + 2 &=& \color{yellow}{5}x^2 + \{\color{red}{-10}+(\color{red}{-1})\} x + \color{yellow}{2} \\ &=& 5x(x-2) -x+2 \\ &=& (x-2)(5x-1) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray} 【問2】\begin{eqnarray} 6x^²+13x-5 &=& \color{yellow}{6}x^2 + \{\color{red}{15}+(\color{red}{-2})\} x \color{yellow}{-5} \\ &=& 3x(2x+5) -2x-5 \\ &=& (2x+5)(3x-1) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray} 【問3】\begin{eqnarray} 12x^2+10x+2 &=& 2(6x^2+5x+1) \\ &=& 2 \{ \color{yellow}{6}x^2 + (\color{red}{3}+\color{red}{2}) x + \color{yellow}{1} \} \\ &=& 2 \{ 3x(2x+1) +2x+1 \} \\ &=& 2(2x+1)(3x+1) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray}

もし、2でくくりそびれてしまったら…

\begin{eqnarray} 12x^2+10x+2 &=& \color{yellow}{12}x^2 + (\color{red}{6}+\color{red}{4}) x + \color{yellow}{2} \\ &=& 6x(2x+1) +4x+2 \\ &=& (2x+1)(6x+2) \\ &=& 2(2x+1)(3x+1) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray} 【問4】$ \hspace{20mm} 35x^2-36x-32 $

$35$と$-32$ を掛けると数字が大きくなるので、そのままにします。
偶奇に着目して$35=5 \cdot 7$ の$5$と$7$を分けてみます。あとは$-32$を2つの整数に分解し、$5$ や $7$ との積の差が$36$になる数字を探しましょう。
積が32になるのは

\begin{array}{|c|c|c|} \hline 32 & 16 & 8 \\ \hline 1 & 2 & 4 \\ \hline \end{array} ですから、$8$と$4$あたりがあやしく、$7\cdot 8$ と $5 \cdot 4 $ から差が$36$の数が見つかります。これで計算できます。 \begin{eqnarray} 35x^2-36x-32 &=& \color{yellow}{35}x^2 + (\color{red}{-7 \cdot 8}+\color{red}{5 \cdot 4}) x \color{yellow}{-32} \\ &=& 7x(5x-8) +5 \cdot 4x-32 \\ &=& 7x(5x-8) +4(5x-8) \\ &=& (5x-8)(7x+4) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray} 【問5】$ \hspace{20mm} 48x^2 -5x \, – 18 $

$48$と$-18$ を掛けると数字が大きくなるので、そのままにします。
偶奇に着目しますが、$48=3 \cdot 16 $ と $18=9 \cdot 2 $ から現れる奇数は分けずにまとめてみます。残った $16$ と $2$ の積を組み直して、差が$5$になる数字を探しましょう。 \begin{eqnarray} 48x^2 -5x \,- 18 &=& \color{yellow}{48}x^2 + (\color{red}{-16 \cdot2 }+\color{red}{27}) x \, \color{yellow}{-18} \\ &=& 16x(3x-2) +27x\, -18 \\ &=& 16x(3x-2) +9(3x-2) \\ &=& (3x-2)(16x+9) \hspace{5mm} \cdots (\mbox{答}) \end{eqnarray}

さあいかがだったでしょうか?3問合っていたら、とりあえず先に行ってOKです。この先いくらでも練習問題なんて出てきますからね。

以上、たすき掛けをしないたすき掛けの因数分解のやり方でした。ぜひあなたの力で広めてください。明日学校に行ったら、友達に教えてあげてください。教えることが最大の学びです!

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